10年間の年金受取で本当に安心できますか?

10年確定年金ばかりが際立つ貯蓄性保険

財政赤字や年金運用の成果が芳しくないニュースが日々流れるのを見て、自分たちが老後を迎えたときに本当に年金を受け取ることができるのかどうか確証が持てない今日、国の制度だけを頼りっきりではなく、自助努力で老後の生活資金の確保を目指す方が増えてきています。

その手段として代表的なものは、個人年金保険や、解約返戻金を将来の生活財源として加入することが多い円建・外貨建終身保険などが挙げられますが、これら貯蓄性保険を老後資金としてあてにしている方に多く見られるのが、その積立金を「10年間」に渡って分割で受け取ることを前提としているものです。

あえて「10年間」に分割して受け取るメリットとしては、積立金は、契約当初の積立利率で保険会社によって運用されていますので、保険会社に預けておく期間が長ければその分運用されてることになるため、「一括」で一気に積立金を受け取るよりも、「分割」で受け取ったほうがトータルで受け取る金額が「増える」という特徴があるからでしょう。

この「分割」という年金受取手段は、万が一年金がもらえなかった場合の代替手段にもなりますので、先に言述した「年金不安」を解消する手段として非常に合理的です。

また、各保険会社のパンフレットや設計書なども、この「10年分割」を前提として数値が記載されていることが多いのですが、果たして本当に「10年間」の受け取り方法で安心できるのでしょうか?

人生100歳時代と言われる超高齢化社会

人の寿命はそれこそ人それぞれですが、確実に平均寿命は延びてきており、健康で長生きすることはもちろん好ましいことですが、生きていくにはそれなりのお金が必要になることも現実的に事実です。

豊かな老後生活を過ごしたいという思いが強い方であれば、若いころから自助努力で老後のための資産作りを行っている方も多いと思われますが、生命保険を活用した資金作りには少々注意が必要です。

それは、前述したとおり、積立金の受け取りが「10年分割」となっているケースが非常に多く、その受け取り開始年齢は、「60歳」もしくは「65歳」と指定しているケースがほとんどとなっているようです。

つまりは、「70歳」もしくは「75歳」で、今までの積み立てしてきた成果が終了してしまうこととなり、それ以降の財源は、それこそ不安な公的年金をあてにするほか、なくなってしまうことになります。

人生100歳時代と言われる現代社会において、70歳や75歳という年齢で、今まであてにしてきた財源が終了してしまうというのは、それ以降、大きな不安となってしまうのではないでしょうか。

「フロー収入」と「ストック収入」

近年、オレオレ詐欺が異常なほど頻発しておりますが、その被害者のほとんどとなっているのは、高齢者であることは皆さんもご存知だと思います。

これは、「高齢者がお金を持っている」というシンプルな理由が考えられますが、なぜ高齢者がお金を持っているのかというと、年金収入という「フロー収入」が限られている立場の人間にとっては、できるだけ「資産(ストック)」を消費せずに、できるだけフロー収入を日々の生活費に使い、ストックはできるだけ貯めて置きたいという心理から来ているそうです。

年齢も若く健康のうちは、収入を得るための手段は「選り好み」しなければ、膨大な選択肢があります。
しかし、年齢が高くなり、健康状態に不安が出てくる年齢になりますと、収入を得るための手段は本当に限られてしまい、年金収入だけという方も少なくありません。
いつ大きな支出が襲い掛かってくるか分からないという不安から、お金を貯めこむ習性があるそうです。

実際にあった「10年確定年金」の罠

数か月前にご相談いただいたケースとして、日本社で3本の個人年金保険にご加入されていらっしゃらったHさんという方が、その個人年金保険の妥当性について診断の依頼をいただきました。

個人年金保険は、利率の低い円建てであったとしても、指定された保険料払込期間まで保険料をしっかり払い込めば元本を下回ることはほとんどないため、商品性については問題がなかったのですが、3本とも、年金受け取り開始年齢が「60歳」で、「10年確定年金」の内容でした。

つまりは、「70歳」で年金の支給が終わってしまうこととなるのですが、Hさんは「貯まる」という商品性や、「返戻率」といった数値ばかりに意識が行き過ぎており、70歳以降の生活費についての考えが及んでなかったようです。

ここで、先の「フロー収入」と「ストック収入」のお話を交えて、70歳以降も継続した収入がある場合となかった場合とで、どういった生活を過ごすことになるのかについてのシミュレーションを行ったところ、そこで初めて70歳以降の収入がないことに対しての危機感を覚えられました。

特に、お子様が遠方にお住まいでいらっしゃるということで、自身の「介護」への期待もできないこともあり、もし自分が人の介護を得なければ生活できないような状態になってしまったとき、有料の老人ホームなどを利用するしかないという結論に至りました。

しかし、高齢化社会において、有料老人ホームは順番待ちの状況が一向に解消せず、また、非常に高額な費用(月当たり数十万円)がかかるため、そういったときにフロー収入がないのは、経済的に非常に大きな不安を感じられました。

その後は、3本のうち2本の個人年金保険を、今まで支払ってきた保険料が無駄にならないように「払済保険」に切り替える提案をコンサルタントから受け、浮いた保険料で、70歳以降も継続して収入を得られるような貯蓄性保険にお切り換えになられ、老後の経済的な不安を大きく解消することに成功されたそうです。

コンサルタントに相談するメリット

Hさんは、インターネットで情報を収集することが趣味なようで、生命保険の「商品」に関する知識は、非常にお持ちの方でした。

しかし、商品の知識ばかりに意識が行き過ぎて、加入するかしないかといった「入口」の部分にとらわれてしまい、実際に保険を使う場面である「出口」の部分については、イメージが膨らまなかったようです。

保険のプロコンサルタントは、保険の加入のお手伝いをするのではなく、むしろそれから何十年先の保険を使う場面を想定したアドバイスを行います。
これは、保険は「加入すること」が目的ではなく、「使うこと」が目的であることを理解しているからです。

自分で気づかなかったことを気づかせてくれる、これがコンサルタントに相談する固有のメリットだと思います。